平成バブル崩壊時と、現在の不動産市場の類似点について、これは現在の日本の不動産市場を考えるうえで、非常に面白い比較です。
結論から言うと、現在の不動産市場には平成バブル崩壊前との「類似点」は確かにあります。ただし、バブルの構造そのものはかなり違います。
特に重要なのは、
「価格が上がっていること」よりも、「なぜ価格が上がっているのか」
です。
平成バブルと現在の共通点
まず、似ている部分を整理すると次のようになります。
| 項目 | 平成バブル期 | 現在 |
|---|---|---|
| 不動産価格 | 急上昇 | 上昇 |
| 都心部 | 特に価格上昇 | 特に価格上昇 |
| 高額物件 | 投機資金が流入 | 富裕層・海外資金等が流入 |
| 「まだ上がる」という期待 | 強かった | 一部で強い |
| 投資目的の購入 | 活発 | 活発 |
| 金融環境 | 超低金利・信用拡大 | 低金利+金融緩和の影響 |
| 土地・住宅ローン | 融資拡大 | 住宅ローン・投資融資 |
| 価格と所得 | 大きく乖離 | 一部エリアで乖離 |
| 不動産の二極化 | バブル末期に顕著 | 現在すでに顕著 |
つまり、
「不動産価格が上昇する→上昇期待が強くなる→投資資金が入る→さらに価格が上がる」
という心理的な循環は、確かに共通しています。
最大の類似点は「価格上昇そのものが投資理由になること」
これは非常に重要です。
本来、不動産投資では、
家賃収入・収益性・人口・立地・将来需要
などを見て価格を判断します。
ところが市場が過熱すると、
「今買っておけば、来年もっと高く売れる」
という考え方が強くなります。
平成バブルでは、この心理が極端に強まりました。
現在の東京23区などでも、
「高いけれど、さらに上がるのでは?」
という期待が購入動機の一部になっています。
この部分は確かに似ています。
ただし「金融構造」は全く違う
ここが最も重要です。
平成バブルの最大の特徴は、
銀行が不動産を担保に大量のお金を貸したこと
でした。
例えば、
土地価格上昇
↓
担保価値上昇
↓
銀行が融資拡大
↓
企業・個人が土地購入
↓
土地価格さらに上昇
↓
担保価値さらに上昇
↓
さらに融資
という、
「土地価格→担保価値→融資→土地価格」
の巨大な循環が形成されました。
これがバブルを膨張させました。
現在は「土地担保バブル」とは言いにくい
現在は、平成バブル期ほど銀行融資が無制限に拡大しているわけではありません。
むしろ現在の価格上昇には、
- 建築費上昇
- 人件費上昇
- 土地取得費上昇
- 都市部への人口集中
- 世帯所得上昇
- 低金利
- 海外投資家
- 富裕層
- 投資マネー
- 供給不足
など、複数の要因があります。
つまり、
平成バブル=金融主導のバブル
に対して、
現在=金融+実需+供給制約+海外資金などが混在
しています。
ここは非常に大きな違いです。
「土地神話」がまだあるのか?
平成バブル期には、
「土地は絶対に下がらない」
という、いわゆる土地神話が存在しました。
現在は、さすがにそこまでではありません。
むしろ、
「東京は人口が集まる」
「駅近は強い」
「再開発エリアは強い」
「希少性の高いマンションは強い」
という、条件付きの不動産神話に変わっています。
これは重要な違いです。
「日本の土地なら何でも上がる」ではなく、
「上がる場所と下がる場所が分かれる」
という市場になっています。
実は「逆K字型」になっている
現在の不動産市場を平成バブルと比較すると、私はここが最も重要だと思います。
現在は、
上昇する不動産
- 東京23区
- 駅近
- 都心
- 再開発エリア
- 高所得者層が多い地域
- 生産年齢人口が増える地域
- 希少性の高いマンション
一方で、
下落・停滞する不動産
- 人口減少地域
- 駅から遠い住宅地
- 老朽化マンション
- 需要の弱い郊外
- 空き家が増える地域
があります。
つまり、
「日本全国が一緒にバブルになる」
という平成バブルとは違います。
現在は、
上がる地域と下がる地域が同時に存在する「二極化市場」
なのです。
では「バブルではない」と言い切れるのか?
ここも注意が必要です。
私は、
「日本全体が平成バブルと同じ状態ではない」
とは考えますが、
「現在の不動産市場にバブル的な部分がない」
とは考えません。
特に警戒したいのが、
① 高額マンション
② 都心一等地
③ 投資用不動産
④ 一部の再開発エリア
⑤ 富裕層向け物件
です。
これらでは、
実際の収益力や居住価値以上に「希少性」「将来値上がり期待」が価格を押し上げている
可能性があります。
平成バブル崩壊との決定的な違い
平成バブルを本当に崩壊させたのは、
「不動産価格が高すぎた」だけではありません。
金融政策の引き締めと、それに伴う信用収縮が非常に大きな役割を果たしました。
簡単にすると、
金利上昇
↓
融資縮小
↓
不動産購入者減少
↓
不動産価格下落
↓
担保価値低下
↓
銀行がさらに融資を絞る
↓
企業・不動産会社の資金繰り悪化
↓
土地売却
↓
さらに土地価格下落
という悪循環です。
これが平成バブル崩壊の恐ろしさでした。
現在も「金利」が最大の監視ポイント
だから現在の不動産市場を見る場合、
「人口減少だから暴落する」
だけでは不十分です。
むしろ重要なのは、
金利
↓
住宅ローン負担
↓
購買力
↓
不動産需要
↓
不動産価格
という経路です。
さらに投資用不動産では、
金利上昇→投資利回り悪化→投資家撤退
というルートもあります。
もう一つの共通点「高値で売りたい人が増える」
これは市場心理として非常に重要です。
価格が上昇すると、
売主
「今なら高く売れる」
↓
買主
「さらに上がる前に買わなければ」
↓
売主
「だったらもっと高く売れるのでは?」
↓
売出価格上昇
という循環が起きます。
この結果、
売出価格と実際の成約価格の乖離
が拡大することがあります。
これは現在のマンション市場を見るうえで非常に重要な指標です。
平成バブルと現在を一言で比較すると
私はこう整理すると分かりやすいと思います。
平成バブル=「日本の土地そのものが上がる」というバブル
に対して、
現在=「東京・都心・駅近・希少性の高い不動産なら上がる」という選別型のバブル
です。
したがって、
「平成バブルの再来」ではない。
しかし、
「一部の不動産では、バブル的な価格形成が起きている」
という見方は十分できます。
12.そして、前回のPB問題とつなげると非常に面白い
先ほどのプライベートバンク・プライベートクレジットの話と今回の不動産市場をつなげると、実は一つの大きなシナリオが見えてきます。
海外・富裕層マネー
↓
PB・ファンド
↓
株式・PE・不動産
↓
都心不動産価格上昇
↓
「まだ上がる」という期待
↓
さらに資金流入
という流れです。
ここで金融市場に大きなショックが起きると、
資金流入
が
資金流出
に反転する可能性があります。
すると、
株価下落
↓
投資家のリスク回避
↓
不動産投資縮小
↓
高額物件の成約減少
↓
売出価格と成約価格の乖離拡大
↓
価格調整
というルートが考えられます。
結論
したがって、現在の不動産市場を見るとき、
「平成バブルと同じか?」
という二択で考えるのは適切ではありません。
むしろ、
平成バブル
全国的・金融主導・土地担保・銀行融資型
現在
都市部中心・選別型・富裕層/海外資金・供給制約+金融要因
と考えるべきでしょう。
そして最大のポイントは、
現在の不動産価格が「実需による価格」なのか、それとも「将来さらに上がるという期待による価格」なのか。
ここを見極めることです。
「売出価格はエベレスト、成約価格はキリマンジャロ」
「売出価格はエベレスト、成約価格はキリマンジャロ」という現在の東京都マンション市場の状況と平成バブル末期を具体的な数字で比較してみましょう。
ただし、最初に重要な注意点があります。「売出価格」と「成約価格」の乖離を平成バブル末期と現在で完全に同じ統計系列で比較することはできません。 現在のREINSには「新規登録」「在庫」「成約」という比較可能な系列がありますが、1990年前後について同じ形式の中古マンション売出価格データを揃えるのは難しいためです。
そのため今回は、
① 現在の「売出価格 vs 成約価格」
② 平成バブル末期の「成約価格・マンション価格」
③ 両者の共通点・決定的な違い
という順番で比較します。
まず「エベレスト」と「キリマンジャロ」の正体
2026年7月の首都圏中古マンションを見ると、非常に象徴的な数字が出ています。
| 2026年7月・首都圏中古マンション | ㎡単価 | 平均価格 |
|---|---|---|
| 実際の成約 | 84.17万円/㎡ | 5,267万円 |
| 新規登録=売り出し | 117.86万円/㎡ | 6,834万円 |
| 在庫 | 118.30万円/㎡ | 6,866万円 |
つまり、売り出し側の㎡単価117.86万円に対して、実際に売れた価格は84.17万円。
単純比較すると、
117.86 ÷ 84.17 ≒ 1.40
です。
つまり、
売り出し価格は成約価格より約40%高い
状態です。
これが、以前お話しした
「売出価格はエベレスト、成約価格はキリマンジャロ」
という状態です。
金額にすると「1,567万円」の差
平均価格で見ると、さらに分かりやすいです。
売出価格:6,834万円
に対して、
成約価格:5,267万円
です。
差額は、
6,834万円-5,267万円=1,567万円
です。
つまり平均的な中古マンションでも、
「売り手が期待している価格」と「実際に買い手が支払った価格」に約1,567万円の差
があります。
しかもこれは単なる希望価格だけではありません。
売れなかった物件が在庫として積み上がっているため、
「高く売りたい」→売れない→在庫になる
という市場の摩擦が数字に表れています。
そして、さらに重要なのが「在庫」です
2026年7月の在庫は、
47,151件
まで増えました。
前年同月比では、
+5.5%
です。
一方、成約件数は、
3,638件
で、
前年同月比-8.6%
です。
これはかなり重要です。
つまり、
売り物件が増えている
のに、
実際に売れる件数は減っている
のです。
しかも、
在庫価格:6,866万円
に対して、
成約価格:5,267万円
です。
差額は、
1,599万円
になります。
ここが平成バブル末期と似ている
では、平成バブル末期はどうだったのでしょうか。
首都圏の新築マンション平均価格は、バブル崩壊直前の1990年に、
6,123万円
まで上昇しました。
平均専有面積は65.54㎡でした。
また、東京の新築マンション坪単価は1990年に、
約464万円/坪
という非常に高い水準まで上昇しています。
つまり平成バブル末期も、
「マンション価格そのものが異常な高値になっていた」
という点では、現在とよく似ています。
そして中古マンションでは「バブル期最高値」を現在が超えている
もっと驚く数字があります。
東日本レインズによる首都圏中古マンションの成約㎡単価は、
1990年9月
85.50万円/㎡
でした。
これがバブル期のピークです。
ところが2026年には、
2026年3月
86.34万円/㎡
2026年4月
85.93万円/㎡
と、バブル期ピークを上回っています。
2026年7月には、
84.17万円/㎡
まで低下しましたが、それでも1990年10月の83.50万円/㎡を上回る水準です。
つまり、
中古マンションの「実際の成約価格」だけを見ても、現在は平成バブル末期とほぼ同じ水準に到達している
わけです。
しかし、現在の方が「売出価格と成約価格のワニの口」が大きい
ここが今回の比較で最も重要です。
平成バブル末期:
価格そのものが猛烈に上昇していた
現在:
価格そのものが高い+売り手の希望価格がさらに上昇している
という違いがあります。
2026年6月の場合、
- 成約:82.64万円/㎡
- 新規登録:115.57万円/㎡
- 在庫:116.54万円/㎡
でした。
成約と在庫の差は、
33.90万円/㎡
です。
比率では約41%です。
そして7月も、
- 成約:84.17万円/㎡
- 新規登録:117.86万円/㎡
- 在庫:118.30万円/㎡
となっています。
つまり、
「ワニの口」が閉じるどころか、かなり大きく開いた状態
なのです。
平成バブルと現在を数字で並べる
かなり分かりやすく整理できます。
| 指標 | 平成バブル末期 | 現在 |
|---|---|---|
| 中古マンション成約㎡単価ピーク | 85.50万円/㎡(1990年9月) | 86.34万円/㎡(2026年3月) |
| 現在の成約㎡単価 | ― | 84.17万円/㎡(2026年7月) |
| 首都圏新築マンション平均価格 | 6,123万円(1990年) | 新築市場では高額化 |
| 現在の中古マンション成約価格 | ― | 5,267万円 |
| 現在の新規登録価格 | ― | 6,834万円 |
| 現在の在庫価格 | ― | 6,866万円 |
| 売出→成約の価格差 | 比較可能な同一系列なし | 約1,567万円 |
| 成約件数 | ― | 前年比-8.6% |
| 在庫件数 | ― | 前年比+5.5% |
1990年の首都圏新築マンション平均価格6,123万円については長谷工総合研究所の整理、1990年の中古マンション成約㎡単価85.50万円については東日本レインズ系資料に基づくものです。
では「平成バブル崩壊直前」と同じなのか?
ここは「NO」です。
数字だけを見ると非常に似ています。
しかし、価格上昇の構造が違います。
平成バブル
土地価格上昇
↓
担保価値上昇
↓
銀行融資拡大
↓
土地・不動産購入
↓
さらに土地価格上昇
という、
金融機関による信用拡大型バブル
でした。
現在は「価格上昇+供給制約+富裕層・海外資金」が混在
現在のマンション価格には、
- 建築費高騰
- 土地価格
- 人件費
- 新築供給制約
- 東京への人口・世帯集中
- 高所得世帯
- 海外投資家
- 富裕層
- 低金利・金融環境
などが複合しています。
そのため、
「現在の価格=全部が投機価格」
とは言えません。
ここが平成バブルとは違います。
ただし「危険信号」はかなり見えている
今回の数字で私が注目するのは、価格そのものよりも、
① 成約件数減少
-8.6%
② 在庫増加
+5.5%
③ 成約単価
-1.5%
④ 新規登録単価
+20.4%
⑤ 在庫単価
+28.2%
という組み合わせです。
これは、
売り手は価格を上げ続けているのに、買い手がその価格についてきていない
ということを示しています。
ここは非常に重要です。
平成バブル末期との最大の違いは「崩壊前の価格形成」
平成バブルでは、
「買えば上がる」
という期待が非常に強く、
土地そのものの価格が急騰
していました。
現在は、
「売りたい人は高く売りたい」
一方、
「買える人はその価格では限られる」
という状況が強まっています。
したがって、現在の市場では、
売出価格
↓
買い手がつかない
↓
在庫増加
↓
成約件数減少
↓
価格交渉
↓
成約価格低下
という順番で調整する可能性があります。
これは、平成バブルのような一気に信用が崩壊するタイプの調整とは異なる可能性があります。
私なら現在を「バブル崩壊直前」ではなく「価格の分岐点」と表現します
ここが今回の結論です。
現在の東京マンション市場は、
平成バブル末期と同じ価格水準に到達した
という意味では非常に似ています。
しかし、
平成バブルと同じ仕組みで膨張しているわけではない。
むしろ今の最大の問題は、
「成約価格はキリマンジャロなのに、売主が付ける価格はエベレストまで上がっている」
ことです。
そして2026年7月には、
成約5,267万円
に対して、
在庫6,866万円。
その差は、
1,599万円
です。
さらに成約件数は減り、在庫は増えています。
したがって今後見るべきなのは、
「東京マンションの平均価格が下がるか?」
だけではありません。
むしろ、
① 売出価格
② 在庫価格
③ 成約価格
④ 成約件数
⑤ 在庫件数
この5つの数字です。
特に、
「売出価格↑・在庫↑・成約件数↓・成約価格↓」
という4つが同時に進み始めたら、私は東京マンション市場の本格的な価格調整の初期シグナルとしてかなり警戒します。
現時点では、すでにそのうち複数の兆候が出ていますが、「平成バブル崩壊と同じ」と断定できる段階ではありません。




