国立社会保障・人口問題研究所の2020年国勢調査ベースでは3,696,171人です。最新の「日本の地域別将来推計人口」(2023年12月推計)では、2035年に3,145,630人まで減少すると推計されています。つまり、2020年から2035年までに約55.1万人、14.9%減少する計算です。
そして不動産市場については、単純に「人口が15%減るから不動産価格も15%下がる」とは考えられません。国土交通省も、人口増減率と地価変動率には強い相関がある一方、これはあくまで都道府県データ上の関係であり、個別地域の価格をそのまま決めるものではないとしています。
そこで、人口減少率を基礎にした3つの価格シナリオを作ります。
1.四国4県の人口は2035年までにどう減るのか
| 県 | 2020年 | 2035年 | 減少人数 | 減少率 |
|---|---|---|---|---|
| 徳島県 | 71.96万人 | 60.08万人 | ▲11.88万人 | ▲16.5% |
| 香川県 | 95.02万人 | 83.79万人 | ▲11.23万人 | ▲11.8% |
| 愛媛県 | 133.48万人 | 113.90万人 | ▲19.59万人 | ▲14.7% |
| 高知県 | 69.15万人 | 56.80万人 | ▲12.35万人 | ▲17.9% |
| 四国4県 | 369.62万人 | 314.56万人 | ▲55.05万人 | ▲14.9% |
徳島・高知の減少率が特に大きく、香川が比較的緩やかです。
つまり2035年には、
現在の四国4県から「横浜市1都市分に近い人口」が消える
というほどのインパクトがあります。
世帯数の推移が不動産需要に与える影響
人口が減っても、単身世帯や高齢者世帯が増える局面では、世帯数が人口ほど急減しないことがあります。これは短期的には住宅需要を支えますが、戸建て需要が増えるとは限りません。
高齢者の住み替えや相続によって、広い戸建てが市場に出やすくなります。単身世帯の増加は、駅近マンションや医療機関に近い小規模住宅への需要を生みます。世帯数が維持される地域でも、必要とされる住宅の種類は変わるのです。
2.しかし「人口▲15%=不動産▲15%」ではない
ここが不動産分析では非常に重要です。
例えば、
人口▲15%
↓
住宅需要▲15%
↓
不動産価格▲15%
とはなりません。
なぜなら、
- 新築住宅の供給減少
- 世帯数の変化
- 高齢者の死亡による相続売却
- 空き家増加
- 若年層の流出
- 都市部への人口集中
- 金利
- 所得
- 建築費
- インフレ
- 投資需要
などが同時に作用するからです。
実際、2025年の地価調査では全国住宅地が前年比+1.0%だった一方、地方圏は+0.1%にとどまっています。つまり「全国平均が上昇しているから地方も上がる」という構造ではありません。
3.そこで3つの価格シナリオを作る
今回は、
人口減少に対する地価の感応度
を仮定します。
シナリオA:人口減少の50%だけ価格に反映
人口▲14.9%
↓
地価▲約7~8%
シナリオB:人口減少と同程度
人口▲14.9%
↓
地価▲約15%
シナリオC:人口減少の1.5倍
人口▲14.9%
↓
地価▲約22~23%
これは「将来価格を予言」するものではなく、人口要因だけを取り出した感応度分析です。
4.四国全体の2035年不動産価格
2026年現在の価格を「100」として考えます。
| シナリオ | 2035年価格指数 | 価格変化 |
|---|---|---|
| 楽観 | 92~93 | ▲7~8% |
| 基準 | 約85 | ▲15% |
| 悲観 | 77~78 | ▲22~23% |
私なら、四国全体の住宅地については「▲10~20%程度」を人口要因による基本的な警戒ゾーンとして見ます。
ただし、これは四国全体の平均的な話です。
土地価格・地価公示・過去の価格推移から見た妥当性
地価公示や都道府県地価調査は、地点ごとの価格推移を確認するために有効です。全国平均が上昇していても、地方圏の上昇率が小さいことは珍しくありません。
過去の地価が長期下落している地域では、人口減少が価格に先行して織り込まれている場合があります。反対に、再開発や企業進出がある地域では、人口統計だけで予測すると過小評価になります。
ここからが重要です。
5.県別に見るとかなり違う
人口減少率だけを価格に反映させた場合、
徳島県
人口
▲16.5%
価格シミュレーション:
- 楽観:▲8.6%
- 基準:▲16.5%
- 悲観:▲23.7%
したがって、人口要因だけなら**▲10~25%程度**が警戒レンジ。
香川県
人口
▲11.8%
価格シミュレーション:
- 楽観:▲6.1%
- 基準:▲11.8%
- 悲観:▲17.2%
四国4県では比較的有利です。
特に高松市中心部など、人口・商業・行政・医療機能が集積する地域では、この数字より下落幅が小さくなる可能性があります。
愛媛県
人口
▲14.7%
価格シミュレーション:
- 楽観:▲7.6%
- 基準:▲14.7%
- 悲観:▲21.2%
松山市への人口・都市機能集中がポイントです。
県全体では人口減少しても、松山市中心部と地方部では全く違う市場になります。
高知県
人口
▲17.9%
価格シミュレーション:
- 楽観:▲9.4%
- 基準:▲17.9%
- 悲観:▲25.6%
4県の中では最も厳しい人口動態です。
特に地方部では、人口減少だけではなく、
「買い手そのものが少なくなる」
という流動性リスクが大きくなります。
4県の住宅地・商業地シナリオ比較
2026年を100とした場合の目安は次のとおりです。
| 用途 | 強気 | 標準 | 弱気 |
|---|---|---|---|
| 住宅地 | 92〜95 | 80〜90 | 70〜80 |
| 商業地 | 90〜98 | 78〜90 | 65〜80 |
| 中古住宅 | 85〜95 | 70〜88 | 55〜78 |
中古住宅は建物の老朽化が加わるため、土地より下落幅が大きくなる場合があります。商業地は中心部と空き店舗の多い地域で差が極端になるでしょう。
6.しかし「本当に怖いのは平均価格ではない」
ここが私が最も重要だと考えるところです。
例えば四国全体の平均地価が、
▲15%
だったとしても、
すべての地域が▲15%になるわけではありません。
むしろ、
Aランク
高松・松山などの中心部
人口減少
↓
人口集中
↓
住宅需要維持
→ 0~▲10%程度
場合によっては上昇もあり得る。
Bランク
県庁所在地の郊外・地方都市
人口減少
↓
住宅需要減少
→ ▲10~25%程度
Cランク
郊外・過疎地域
人口減少
↓
空き家増加
↓
売却物件増加
↓
買い手減少
↓
価格下落
→ ▲25~40%以上
も十分に考えられます。
7.さらに「土地」と「建物」を分ける必要がある
例えば築30年の戸建てを考えてみます。
土地価格が
3,000万円 → 2,400万円
になったとします。
▲20%です。
一方、建物が老朽化して、
1,000万円 → 500万円
となれば、
物件総額は
4,000万円
↓
2,900万円
となります。
つまり、
土地▲20%
でも、
物件総額▲27.5%
になる。
逆に駅近マンションなら、建物の希少性や建築費上昇によって、人口減少ほど価格が下がらない可能性もあります。
8.2035年に四国で起こり得る「K字型不動産市場」
四国の不動産市場におけるこの「二極化構造」の整理は、今後の人口動態と都市政策(立地適正化計画など)の潮流を的確に捉えています。
四国4県の総人口が減少局面に入る中、限られたインフラや医療・商業機能が維持されるエリアに需要が凝縮する構図です。
「強い不動産」と「弱い不動産」の分水嶺
| 区分 | 主な対象エリア | 需要を支える要因 / 懸念点 | 不動産市場の動向 |
| 強い不動産 | ・各県庁所在地の中心部(松山、高松、徳島、高知の中心駅・繁華街周辺) ・拠点病院・商業集積へのアクセスが良い平坦地 | ・医療・買物機能への近接性 ・利便性を求めるシニア層の移住・住み替え需要 ・公共交通の維持エリア | 価格維持〜微減に留まる。流動性が高く、賃貸・売買ともに成約しやすい。 |
| 弱い不動産 | ・山間部・過疎地 ・昭和期に開発された傾斜地の大規模ニュータウン ・公共交通や幹線道路から外れた集落 | ・若年層の流出と急激な高齢化 ・バス路線の撤退など生活インフラの縮小 ・解体・撤去費用の負担 | 空き家・所有者不明土地の増加。売却希望に対して買い手が不在となり、実質的な資産価値がゼロ〜マイナス化。 |
さらに加速させる3つの要因
- 自治体の「コンパクトシティ化」方針
インフラ維持コストの観点から「居住誘導区域」の内外で行政サービス・補助金の格差が広がり、境界線の外側にある不動産の需要減退に拍車がかかります。
- 自然災害リスクへの感応度
南海トラフ巨大地震や水害(河川氾濫・土砂崩れ)リスクへの警戒感から、ハザードマップ上で安全とされるエリアへ需要が一層集中します。
- 維持コストの負担感増大
相続登記の義務化や管理不全空き家に対する固定資産税の優遇見直しなど、持っているだけで負担となる「負動産」の手放し圧力が高まります。
地域産業・雇用・GX投資が価格に与える影響
人口が減る地域でも、製造業、物流、医療、観光、再生可能エネルギーなどの雇用が維持されれば、住宅需要は残ります。GX投資や工場再編による雇用創出も見逃せません。
逆に主要産業の縮小や事業所撤退が起きれば、人口推計以上の下落につながります。交通インフラの整備、駅前再開発、企業誘致は、地価を押し上げる数少ない反転材料です。
私は四国については、今後この形になる可能性が高いと見ます。

つまり、
「四国の不動産が下落する」のではなく、「売れる不動産と売れない不動産の差が極端に広がる」
ということです。
9.さらに2035年は「人口」より「生産年齢人口」が重要
四国4県では、2035年に高齢化率がさらに上昇します。
例えば香川県では、2020年の65歳以上比率32.5%から2035年には35.9%、愛媛県では33.2%から37.0%、高知県では34.6%から37.4%になる推計です。
つまり、
人口▲15%
だけではなく、
住宅を購入する現役世代の比率も低下
していく。
これは中古住宅市場にとって非常に重要です。
災害リスク・ハザードマップが2035年の価格に与える影響
南海トラフ地震、津波、洪水、土砂災害は、四国の不動産価格を左右する重要な要因です。災害リスクが高い地域では、購入検討者が減り、融資や保険の条件にも影響する可能性があります。
津波・洪水・土砂災害リスクの確認方法
購入前には、国土交通省のハザードマップポータルサイト、自治体の防災マップ、洪水・高潮・津波・土砂災害の各区域を確認します。物件所在地だけでなく、避難経路、前面道路、周辺の標高も見てください。
重要事項説明書に記載される区域だけで判断するのは不十分です。過去の浸水履歴や自治体の避難計画まで確認すると、将来の売却リスクを把握しやすくなります。
防災性と保険料が購入判断に与える影響
災害リスクが高い物件では、保険料、免責金額、補償範囲を確認する必要があります。金融機関の担保評価や買い手の心理にも影響し、将来の売却価格が周辺より低くなることがあります。
耐震性、地盤、盛土、擁壁、浸水対策が確認できる住宅は評価を保ちやすい傾向です。安さだけで選ぶと、2035年に売却時の説明責任や改修費で苦労します。
2035年までの地域課題と不動産市場のロードマップ
2026年・2030年・2035年の確認ポイント
2026年は、人口、地価、空き家、公共交通、再開発計画を基準値として記録します。2030年は、人口移動、地価の方向、バス路線、企業投資、住宅着工を再確認します。
2035年には、居住誘導区域への集中、空き家処分、医療・商業施設の維持状況を検証します。節目ごとに同じ指標を追えば、予測と現実の差を修正できます。コピー
公共交通・空き家・産業誘致のボトルネック
公共交通の減便は、車を使えない世帯の居住選択を狭めます。空き家の解体費や相続手続きが進まなければ、売り物件だけが増えます。産業誘致も、雇用の規模と継続性がなければ住宅市場を支えません。
自治体の施策は、予算、対象区域、実施時期まで確認しましょう。計画があることと、地域の資産価値が上がることは同じではありません。
購入前に確認する統計・計画・地域指標
人口推計、住民基本台帳、世帯数、年齢構成、地価公示、取引価格、住宅着工、空き家率を確認します。都市計画、立地適正化計画、地域公共交通計画、防災計画も有用です。
不動産会社の査定だけでなく、自治体と国の一次資料を照合してください。数字を一つ見るのではなく、複数の指標が同じ方向を示しているかがポイントです。
購入可能額・住宅ローン借入額から考える購入判断
年収・頭金・金利別の借入可能額
借入額は、年収、頭金、金利、返済期間、他の借入、返済負担率で決まります。たとえば年収500万円で返済負担率25%なら、年間返済額の上限は125万円が目安です。金利上昇を考え、実際の借入可能額は金融機関の提示額より低く設定します。
頭金を増やしすぎて手元資金を失うのも危険です。購入後の修繕、税金、保険、引っ越し費用を残しておく必要があります。
価格下落シナリオに備えた返済計画
2035年に価格が10〜20%下落しても、住み続けられる返済額かを確認します。短期売却の可能性がある場合は、購入価格だけでなく仲介手数料、抵当権抹消費用、残債との差額も計算してください。
変動金利を選ぶなら、金利が上昇した場合の返済額も試算します。将来価格の上昇を前提にした無理な借入は、地方では特に避けるべきです。
購入・賃貸・売却を判断するチェックリスト
購入は、10年以上住む予定があり、交通・医療・雇用へのアクセスが安定している場合に向きます。賃貸は、転勤や地域の将来性に不確実性がある場合に有効です。
売却は、空き家化、修繕費増加、相続人の合意不足が起きる前に検討します。駅距離、ハザード、築年数、管理状態、成約事例を整理して判断してください。
10.私なら2035年をこう予測します
四国4県を一つの不動産市場として考えるなら、
2026年
100
↓
2030年
90~97
↓
2035年
75~90
くらいのレンジを人口動態から想定します。
ただし、これは「四国の全物件の平均価格」という意味ではありません。
より現実的には、
| エリア | 2035年価格イメージ |
|---|---|
| 高松・松山の一等地 | 90~110 |
| 徳島・高知中心部 | 85~100 |
| 県庁所在地の郊外 | 70~90 |
| 地方都市 | 60~85 |
| 過疎地域・不便な住宅地 | 40~70 |
というK字型・多極化を想定します。
11.そして非常に面白いポイント
国交省の分析でも、人口密度と住宅地平均地価には強い相関が確認されています。過去の都道府県データでは、人口密度と住宅地平均地価の相関係数が0.895、決定係数0.797でした。人口増減率と地価変動率にも相関係数0.714が確認されています。
したがって、
人口減少そのもの
よりも、
「人口がどこから消え、どこに残るのか」
を見るほうが、不動産価格を予測する上でははるかに重要です。
結論
四国4県は、
2020年:約370万人
↓
2035年:約315万人
となり、
約55万人・14.9%減少
する見通しです。
人口要因だけでシミュレーションすると、
2035年の四国全体の住宅地価格は▲10~20%程度
を一つの警戒レンジとし、条件が悪い地域では
▲25~40%以上
まで下落する可能性を考えておくべきです。
一方で、高松・松山などの人口・雇用・商業・医療・行政機能が集積する地域は、人口減少率ほど価格が下がらない可能性があります。
したがって、四国の2035年問題は、
「人口が15%減るから不動産が15%下がる」
ではなく、
「人口減少によって、不動産の価値が残る場所と消える場所が明確に分かれる」
と考えるのが、より実務的です。
統計資料・公的データ・執筆者情報
参照した公的機関・統計資料
主な参照資料は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」、国土交通省「地価公示」「都道府県地価調査」「不動産情報ライブラリ」、総務省統計局「国勢調査」、総務省・自治体の住宅・空き家関連統計です。
国立社会保障・人口問題研究所
国土交通省地価公示
不動産情報ライブラリ
取得日は2026年時点の公開情報確認日とし、更新時に再確認します。




