ここでは東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の2035年不動産価格変動予測をしてみます。
四国では「人口減少そのもの」が不動産需要を押し下げるのが大きな問題ですが、1都3県では2035年まで人口がほぼ横ばいです。しかも、その中身を見ると「東京へ集中、3県は減少」という構造になっています。
国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計を基準に分析します。これは2020年国勢調査を起点として2050年まで5年ごとに推計したものです。
1.まず人口を比較します
| 地域 | 2020年 | 2030年 | 2035年 | 2020→2035年 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 1,404.8万人 | 1,434.9万人 | 1,445.9万人 | +2.9% |
| 神奈川県 | 923.7万人 | 912.2万人 | 901.2万人 | ▲2.4% |
| 千葉県 | 628.4万人 | 617.9万人 | 607.6万人 | ▲3.3% |
| 埼玉県 | 734.5万人 | 722.4万人 | 710.1万人 | ▲4.7% |
| 1都3県合計 | 3,691.4万人 | 3,687.4万人 | 3,664.8万人 | ▲0.7% |
数値は国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計を基にしたものです。
ここが四国との決定的な違いです。
四国4県:約369.6万人 → 約314.6万人 ▲14.9%
一方、1都3県:約3,691万人 → 約3,665万人 ▲0.7%
です。つまり、
四国は15年間で約15%人口が減るのに対して、1都3県は2035年までほぼ人口を維持する。
この差は不動産市場に非常に大きな意味を持ちます。
2.しかし「1都3県は安心」ではありません
ここが非常に重要です。1都3県を一つの市場として見ると、
▲0.7%
なので、人口減少による住宅需要への影響は非常に小さく見えます。
しかし、実際には、
東京
+2.9%
神奈川
▲2.4%
千葉
▲3.3%
埼玉
▲4.7%
です。
つまり、
東京が人口を吸収することで、1都3県全体の人口減少が見えにくくなっている
のです。
3.2035年には「東京一極集中」がさらに進む
2020年の1都3県に占める東京都人口の割合は、
約1,405万人 ÷ 約3,691万人= 38.1%
です。
2035年には、
約1,446万人 ÷ 約3,665万人
= 39.5%
程度になります。つまり1都3県の人口がほぼ変わらなくても、
東京都の人口シェアが上昇する
という構造です。これは不動産市場では非常に重要です。
4.不動産価格への人口減少効果をシミュレーション
先ほど四国で行ったのと同じ、
人口減少率 × 価格感応度
という簡易モデルを使います。
例えば人口減少の
- 50%が価格に反映
- 100%が価格に反映
- 150%が価格に反映
という3ケースです。
東京都
人口:
+2.9%
なので、人口要因だけなら価格下落要因ではありません。
むしろ、
人口増加 → 住宅需要維持・増加
です。
人口要因による価格押し下げ:
0%以下
と考えるのが自然です。
神奈川県
人口:
▲2.4%
価格への影響を単純化すると、
| シナリオ | 人口要因による価格 |
|---|---|
| 弱い反映 | ▲1.2% |
| 同程度反映 | ▲2.4% |
| 強い反映 | ▲3.6% |
したがって、
神奈川県全体では人口だけを理由に大幅な価格下落を想定する必要はありません。
千葉県
人口:
▲3.3%
| シナリオ | 価格影響 |
|---|---|
| 弱い反映 | ▲1.7% |
| 基準 | ▲3.3% |
| 強い反映 | ▲5.0% |
埼玉県
人口:
▲4.7%
| シナリオ | 価格影響 |
|---|---|
| 弱い反映 | ▲2.4% |
| 基準 | ▲4.7% |
| 強い反映 | ▲7.1% |
人口だけを見るなら、埼玉県が1都3県の中で最も強い下落圧力を受けます。
5.四国と比較すると非常に面白い
| 地域 | 2020→2035人口 | 人口要因による価格下落警戒 |
|---|---|---|
| 四国4県 | ▲14.9% | ▲10~20%程度 |
| 埼玉県 | ▲4.7% | ▲2~7%程度 |
| 千葉県 | ▲3.3% | ▲2~5%程度 |
| 神奈川県 | ▲2.4% | ▲1~4%程度 |
| 東京都 | +2.9% | 人口要因では下落圧力なし |
| 1都3県 | ▲0.7% | 極めて限定的 |
つまり、
人口だけを比較すれば、四国と首都圏では不動産市場にかかる圧力が全く違います。
6.ところが、もっと重要なのは「生産年齢人口」です
ここからが本当のポイントです。
人口総数だけを見ると、
「1都3県は大丈夫」
となります。
しかし住宅購入の中心となる15~64歳人口を見ると、話が変わってきます。
1都3県は、全国に占める15~64歳人口の割合を維持・上昇させていく地域です。2020年には南関東が全国の15~64歳人口の31.1%でしたが、2035年には33.5%、2050年には36.3%まで上昇する推計です。
つまり、
日本全体では現役世代が減少する一方、東京圏には現役世代が集中する。
これが首都圏不動産の最大の強みです。
7.さらに「世帯数」を見る必要があります
不動産需要では、
人口 > 世帯数
ではなく、
住宅需要 ≒ 世帯数
を見ることが非常に重要です。
国立社会保障・人口問題研究所の2024年の世帯推計でも、東京圏では人口要因が当面世帯数を増やす方向に作用する期間があります。東京都では2035~2040年まで人口要因がプラスとなる一方、千葉・神奈川では2030年まで、埼玉では2025年までプラスとなる見通しです。
つまり、
人口が減少する県でも、世帯数がすぐに減少するとは限らない
わけです。
8.これを不動産市場に置き換えると
私は2035年の1都3県を、次のように考えます。
東京23区
非常に強い
人口集中
↓
世帯形成
↓
住宅需要
↓
土地の希少性
→ 価格維持~上昇
東京多摩地域
比較的強い
ただし、
駅徒歩圏
> 駅遠
という差が拡大。
神奈川県
二極化
横浜・川崎・武蔵小杉などの交通利便性の高い地域
→ 強い
郊外・駅遠地域
→ 弱くなる
千葉県
かなり重要です。
東京へのアクセスが良い地域、
- 市川
- 浦安
- 船橋
- 千葉市の一部
などは比較的強い。
一方、
東京から遠い郊外住宅地
は人口減少の影響を受けやすくなります。
埼玉県
埼玉県は人口減少率が4県の中で最も大きい。
しかし、
- さいたま市
- 大宮
- 浦和
- 川口
- 東京通勤圏
などは別市場です。
つまり、
「埼玉県の人口が▲4.7%だから不動産価格も▲4.7%」
ではありません。
9.私は2035年の首都圏を「K字型」より「逆K字型」に近いと考えます
イメージすると、
2035年
│
┌────────┴────────┐
↓ ↓
東京中心部 郊外・地方
│ │
人口・世帯集中 人口減少
│ │
住宅需要増加 需要減少
│ │
価格維持~上昇 価格下落
そして、その境界線を決めるのが、
「東京まで何分か」
だけではありません。
今後は、
① 駅徒歩距離
② 鉄道利便性
③ 商業施設
④ 医療
⑤ 教育
⑥ 再開発
⑦ ハザードリスク
⑧ 世帯所得
⑨ 建物の築年数
⑩ 管理状態
などが重要になります。
10.1都3県を並べると、非常に面白い結論になります
四国:
人口▲14.9%
↓
住宅需要減少
↓
空き家増加
↓
売却物件増加
↓
買い手減少
↓
価格下落
という流れが起こりやすい。
一方、1都3県:
人口▲0.7%
↓
しかし東京へ人口集中
↓
現役世代集中
↓
世帯形成
↓
住宅需要維持
↓
価格は全体として維持されやすい
となります。
11.ただし「首都圏だから安心」は危険
ここは不動産投資・売買の観点で非常に重要です。
国交省の分析でも、人口密度と住宅地平均地価には強い相関が確認されています。人口密度と住宅地平均地価の相関係数は0.895でした。
つまり、
人口が集中する場所ほど土地価格が維持されやすい
という傾向があります。
その意味で、
「1都3県」という単位で不動産価格を予測すること自体が粗すぎる
のです。
12.2035年の価格を私ならこう見る
2026年を「100」とした場合の人口動態だけから見た概算イメージです。
| エリア | 2035年価格イメージ |
|---|---|
| 東京23区・都心 | 105~120 |
| 東京23区・その他 | 100~115 |
| 横浜・川崎中心部 | 95~110 |
| さいたま市・浦和大宮 | 95~110 |
| 千葉・船橋・市川・浦安等 | 95~110 |
| 神奈川・千葉・埼玉の駅近 | 90~105 |
| 郊外駅徒歩15~20分超 | 75~95 |
| バス便・人口減少地域 | 60~85 |
※これは将来価格を断定する予測ではなく、人口動態・人口集中を中心にしたシナリオレンジです。金利、建築費、所得、供給量、再開発、災害リスク等は別途考慮する必要があります。
最も重要な結論
四国4県と1都3県を比較すると、
四国は「人口減少」が不動産市場の最大のリスク。
一方、
1都3県は「人口減少」ではなく「人口の偏在」が最大のテーマ
になります。
そして2035年に向けて、
東京は人口を維持・増加させる一方、埼玉・千葉・神奈川では人口減少が進む。
それでも東京圏全体では、全国における現役世代のシェアが上昇していく。
したがって、不動産市場では、
「東京圏だから上がる」
でも、
「埼玉・千葉・神奈川だから下がる」
でもありません。
本質は、
「人口が減少する日本の中で、どこに人口・世帯・所得・雇用が集中するのか」
です。




