2026年秋、売出価格から「いくら下」で買うのか?
東京23区のマンション価格は、まだ下がっていません。
むしろ、売り出されている価格を見る限り、上昇しています。
2026年8月の東京23区中古マンション掲載価格は、ファミリータイプが1億2,018万円、シングルタイプが7,292万円。いずれも過去最高値を更新しました。
しかし、ここで一つ大きな疑問があります。
「売出価格が上がっているのに、なぜ値下げする物件が増えているのか?」
答えは簡単です。
売主が希望する価格と、買主が実際に買える価格の間に、少しずつズレが生じているからです。
マンションリサーチが東京都23区の中古分譲マンション60,695事例を分析したところ、2026年8月には、都心5区で「値下げ率」と「販売日数」が2024年1月以降で最高水準になりました。
つまり、
「高く売りたい売主」と「高すぎて買えない買主」
の綱引きが始まっています。
私は、この局面こそ買主が「指値」を使うべきタイミングだと考えます。
1.東京のマンションは「暴落」ではなく「価格選別」の局面に入った
ここで誤解してはいけません。
私は、
「東京23区のマンションがこれから一斉に暴落する」
と言っているわけではありません。
むしろ、これから起こる可能性が高いのは、
マンションごとの価格差が広がること
です。
都心5区では、高額物件を購入できる富裕層や海外購入者が存在するため、一般の住宅ローン利用者だけでは説明できない価格形成が起きています。マンションリサーチの分析でも、都心5区では平均成約価格が2026年に入ってからおおむね1億2,000万円前後で推移しています。
一方、都心5区を除く18区では、2026年3月頃をピークに平均成約価格が6,300万円前後で横ばい。
さらに2026年7月の成約を見ると、
6,000万円未満が54%
8,000万円未満が72%
を占めています。
ここには非常に重要な意味があります。
売り出されているマンションは1億円を超えている。
しかし、実際に成約している価格帯は8,000万円未満が中心。
つまり、
「売主の価格」と「買主の予算」の間に大きな溝ができ始めている
のです。
2.だからこそ「指値」が効いてくる
マンションを購入するとき、多くの人は売出価格を見ます。
1億円なら、
「このマンションは1億円なんだ」
と思ってしまいます。
しかし違います。
1億円は、
売主が希望している価格
です。
本当の市場価格は、
「実際に買主がいくらで買ったのか」
で決まります。
例えば、
売出価格 1億円
成約相場 9,300万円
なら、
1億円は市場価格ではありません。
売主の希望価格です。
この場合、
「9,300万円前後で買う」
という考え方ができます。
さらに、その部屋が3か月売れていない。
一度値下げしている。
同じマンションに競合が5戸ある。
こうなれば、
9,000万円前後への指値
が現実的な交渉になってきます。
3.東京で狙うべき「指値4条件」
では、どんな物件なら指値が効くのでしょうか。
私は次の4条件を重視します。
条件① 同じマンションに競合物件が複数ある
同じマンションに、
5戸、10戸、20戸
と売り物が出ている。
これは買主にとってチャンスです。
「この部屋が駄目なら、隣の部屋を買います」
と言えるからです。
指値交渉では、
代わりがあることが最大の武器
になります。
条件② 売出価格が実勢相場の近くにある
狙うのは、
相場からおおむね±5%程度
の物件です。
例えば成約相場が1億円なら、
9,500万円~1億500万円。
この辺りです。
1億3,000万円で売っている物件に1億円で指値するより、
1億500万円で売っている物件に9,500万円で指値するほうが、
はるかに交渉しやすい。
なぜなら、
売主自身がすでに市場価格を意識している可能性が高い
からです。
条件③ 売出期間が90日以上
売り出したばかりの物件は、売主が強気です。
しかし、
30日。
60日。
90日。
120日。
と時間が経つほど、
「この価格では売れないのでは?」
という心理が生まれます。
東京都全体の中古マンションでは、HowMaの2026年9月データで平均販売期間4.6か月、平均値下げ率2.8%となっています。
したがって、
90日を超えた物件
は指値候補としてチェックする価値があります。
条件④ 一度以上、価格改定している
これは非常に重要です。
例えば、
1億500万円
↓
9,980万円
↓
9,680万円
と価格が下がっている。
これは、
売主が「価格を下げる」という意思決定をした証拠
です。
このタイプの売主に対して、
「9,300万円なら今日買います」
という条件提示をする。
ここに交渉余地が生まれます。
4.「値下げ物件」をさらに値下げして買う
ここからが今回の核心です。
値下げされた物件を見つけたら、
「安くなったから買おう」
ではありません。
むしろ、
「一度値下げした今だからこそ、もう一段指値できないか」
と考えます。
例えば、
当初売出価格 1億500万円
↓
価格改定 9,980万円
↓
ここから、
9,300万円で買付を入れる。
約680万円の指値です。
売主が応じれば、
当初売出価格から1,200万円安い。
つまり、
11.4%安く購入
することになります。
もちろん、すべての売主が応じるわけではありません。
しかし、
「断られたら次へ行く」
という前提なら、指値を入れることに大きなデメリットはありません。
5.2026年秋、東京で注目したい指値候補
現在公開されている物件情報を見ると、すでに「価格変更」を明示している東京23区の大型マンションがあります。
例えば、
アーバンドック パークシティ豊洲 A棟
40階・3LDK・1億8,680万円。
2026年9月2日時点で「価格変更」と表示されています。
また、
パークタワー渋谷本町
19階・66.66㎡・2LDK・1億5,980万円。
こちらも「大幅価格変更」「新価格」「価格改定」と明記されています。
さらに、
東京タワーズ シータワー
46階・83.34㎡・3LDK+S・1億8,900万円。
こちらも2026年9月7日時点で販売情報が確認できます。
ただし、ここで注意してください。
これらは、
「安いから買うべき3物件」ではありません。
あくまで、
「指値候補としてデータを精査する価値がある物件」
です。
本当に指値を入れるなら、
・過去の成約価格
・同じマンションの現在の競合戸数
・同タイプの売出価格
・価格変更回数
・売出期間
・階数差
・方角
・眺望
・リフォーム状態
まで確認します。
6.指値の目標は「売出価格の10%引き」ではない
ここは非常に重要です。
指値を、
「とりあえず10%引き」
と考えてはいけません。
基準は、
現在の売出価格ではなく、実勢価格
です。
例えば、
実勢価格 1億円
売出価格 1億500万円
なら、
9,500万円
という指値は合理性があります。
しかし、
実勢価格 8,000万円
売出価格 1億円
なら、
9,000万円でも高い。
つまり、
「10%値引き」ではなく、「実勢価格からさらにどれだけ下で買うか」
が重要なのです。
7.私なら「相場の10%下」を最初の目標にする
現在の市場環境を考えると、
実勢相場の5~10%下
を一つの指値目標として検討します。
もちろん、物件によって違います。
希少性が高い。
駅直結。
眺望が圧倒的。
同タイプがほとんどない。
こうした物件は指値が難しい。
逆に、
同じマンションに競合が多数。
90日以上売れない。
値下げ済み。
相場の近くまで価格が下がっている。
この4条件が揃えば、
相場の10%下
を試す価値が出てきます。
8.「断られる」のが普通
例えば、
1億円の物件に、
9,000万円で買付。
売主、
「無理です」
これで終わり。
でも、それでいいのです。
次に、
9,800万円の物件。
8,900万円で買付。
また断られる。
それでもいい。
3件目、
9,500万円。
8,700万円で買付。
ここで売主が、
「9,000万円なら」
と言ってきた。
そこで交渉する。
このように、
10件指値して1件成立すればいい
というくらいの考え方で臨むほうが、買主は強くなります。
9.買い手市場で一番弱い買主
逆に、一番弱い買主は、
「このマンションが絶対に欲しい」
という人です。
売主からすると、
「多少高くても、この人は買う」
と分かってしまいます。
すると価格交渉は難しくなります。
一方、
「9,000万円なら買います。それ以上なら今回は見送ります」
という買主。
こちらは強い。
なぜなら、
買わないという選択肢を持っている
からです。
10.東京マンション市場は「売主市場」から「価格選別市場」へ
私は、現在の東京を、
「完全な買い手市場」
とはまだ考えていません。
むしろ、
「売主市場から価格選別市場へ移行している途中」
だと考えます。
売出価格は高い。
しかし、値下げ率は上昇している。
販売期間も長くなっている。
特に都心5区では、その両方が2026年8月に2024年1月以降の最高水準となっています。
一方、都心5区以外の18区では、
「価格を下げれば売れる」
という市場構造がまだ残っています。
だからこそ、
東京23区を一括りにしてはいけません。
11.これからの買主が見るべき数字
これからマンションを買う人は、
「このマンションはいくらですか?」
だけではなく、
次の数字を見るべきです。
① 成約価格
② 現在の売出価格
③ 売出期間
④ 値下げ回数
⑤ 同じマンションの競合戸数
⑥ 同タイプの売出価格
⑦ 相場との乖離率
この7つです。
そして、
「この物件をいくらなら買うのか」
を先に決めます。
12.「売出価格」ではなく「買主価格」を見る
これからの東京マンション市場では、
「いくらで売りたいか」
より、
「いくらなら買えるか」
が重要になります。
マンションリサーチの分析でも、都心5区以外では8,000万円未満の成約が72%を占めています。
これは非常に大きな数字です。
売主が1億円で売りたい。
しかし、
買主の大多数が8,000万円未満でしか買えない。
この状態なら、
どちらが価格を決めるでしょうか。
最終的には、
買主が実際に購入できる価格
です。
まとめ
東京マンションは「待つ」から「指値して買う」へ
2026年9月。
東京23区のマンション価格は、表面的にはまだ上昇しています。
しかし、その裏側では、
値下げ率の上昇
販売期間の長期化
購入可能価格の上限
という3つの変化が始まっています。
だから私は、
「マンション価格が暴落するまで待つ」
という戦略だけをおすすめしません。
むしろ、
買える条件が整っている今、相場より安く買える物件を探す。
そのために、
①競合が多い
②相場の近くまで価格が下がっている
③90日以上売れていない
④一度以上値下げしている
という4条件をチェックする。
そして、
「この価格なら買う。これ以上なら買わない」
と明確に指値する。
断られたら次の物件へ行く。
これが、
2026年秋の東京マンション市場で考えるべき「買い手側の指値戦略」
です。
マンション価格の底を正確に当てる必要はありません。
重要なのは、
「下がる前に高く買わないこと」
です。
そしてもう一つ。
「良いマンションを安く買うこと」
です。
これからの東京マンション購入は、
「何を買うか」だけではなく、「いくらで買うか」。
その価格差が、将来の資産価値を大きく左右する可能性があります。



